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【連想ゲーム 第1回目】スーツ姿のサラリーマン

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~連想ゲーム ルール~

  • 順番を決める
  • お題に沿って、想像していく
  • 尚、小説風とする

 

~メンバー~

 

 

 

【お題】スーツ姿のサラリーマン

 

コカトリス

黒鞄を手にぶら下げた男は、ひたいにかく汗を白いハンカチで拭き取っていた。

時計をチラチラと見て時間を気にしているのだろう。

どうやら、タクシーを待っているようだ。

手を上げて、目的地まで行くのであった。

 

《黛クロナ》

タクシーで目的地に向かう途中、彼はスマホに送られたメッセージに気づいた。

それは、今日外国に旅立つ同僚からのもの。

内容は行ってきます、の一言だけだった。

 

《茜奏》

駅のホームで、ぐったりとベンチに腰掛ける男性。

左腕につけられた時計は午前の1時を指しており、駅には電車が来るはずもなく、ただただ静けさに支配されていた。

今日もまた、終電を逃したのだった。

 

《よう子》

その日は真夏日だった。着ていたワイシャツもインナーを着ていたがピタリと汗が肌につく。俺は木陰のベンチが全て埋まっていたので仕方なしに重い黒い鞄を持ち、真夏の炎天下が照らすベンチに鞄を下ろし、ネクタイをゆるめ、少しワイシャツのボタンを外してパタパタとすると、空を見上げ、ギラギラとこれでもかと輝く太陽を目を細めて見上げた。

 

コカトリス

「田中遅いぞ?」

居酒屋に入るなり罵声が飛ぶ、デスクワークが、やっと終わったのにもかかわらず、今度は接待ときた。

歳を重ね上手くなった愛想笑いを顔に貼り付け、ビールを注ぐ。

文句はあってもいつ度量はない。肝がすらわない俺にとって、なんとも言えない二つ目の現場といったところだろう。

 

《黛クロナ》

タクシーを降り、ボロいアパートの階段を登っていく。きしきしときしむ音が、嫌に耳に突き刺さる。

ああ、今日も疲れた。

風呂にも入らず寝床に横になってテレビをつける。こんな生活の繰り返しに、なんの意味があるのだろう?

ふと、疑問に思ったときには、僕の手は天井から下がったロープにかかっていた。

 

《茜奏》

猫がにゃーんと鳴き、犬がわぉーんと吠える。がたんごとんと電車が走る。

そんな日常的な音が鮮明に聞こえるほど、夜は静かだ。

うぇええ……と電柱で男性が呻く。

飲み会の帰りだろうか。

彼もまた、夜の音の仲間入りだ。

 

《よう子》

「母さん、見て!スーツ、今日はじめて着たんだ!まぁ、買った時に試着はしけど……一番に母さんに見せたくて!」

青年は嬉しそうにほほえむ。

「……僕もいよいよ社会人だよ……母さんが……亡くなってからもう五年かぁ……早いなぁ……本当は直接見せたかったなぁ。」

悲しそうに霊園の墓前でほほえむ青年……。

「でも…………母さんは見てるか!いつも、ずっとそばで!僕、がんばるからね!」

そう言って、にっこりと青年は笑った。

 

 



もし、ここがグラウンドだったなら、現役のころから劣らないスライディングで滑り込んでやったのに。くそ! 地団駄を踏む俺の前で虚しくも電車の扉が閉じていく。今日は大事な取引先との約束があったのに。これで遅刻が確定だ。俺はいつも肝心な時にへまをやらかしてしまう。十年前の甲子園、相手チームの鉄壁の守備を前にホームから一塁と出れなかった自分の情けなさが、フラッシュバックして来やがる。思えばあのときから俺の人生は一塁も進まないどころか、延々と後退し続けているんじゃないか。そんな気さえした。